1日で5,000個の販売を記録。エキナカ催事で実現したブランドの急成長
八天堂の東京進出を支援した株式会社生産者直売のれん会。駅催事から始まったブランド成長の軌跡を伺いました。
地方ブランドを全国区へ育成。生産者直売のれん会が活かすエキナカの販売力
全国の優れた商品を製造するメーカーを支援し、価値ある商品を各地から見つけ出して販売する事業を展開している株式会社生産者直売のれん会。同社は当時、東京進出を希望していた八天堂と協力関係を結び、「冷やして食べるくりーむパン」の販売に着手しました。
出店に伴う初期投資の負担を抑えるべく、常設店ではなく催事という形態を選択。そして、JR東日本クロスステーションの駅構内での試験的な販売に挑んだのです。その結果、大宮駅での初出店において1日5,000個の販売を記録し、その後続いたJR品川臨時売店2号での催事においては、最長18ヶ月連続での出店を果たすなどブランドの大きな躍進に貢献しています。
今回は、同社のブランドライセンス事業部で統括部長を務める矢野崇之さんにインタビューを実施。催事場への出店背景や、JR品川臨時売店2号をはじめとする駅構内での催事販売から得られた具体的な成果について、詳しくお話を伺いました。
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洋菓子と(パン)の技術を融合。「冷やして食べるくりーむパン」誕生の物語
──株式会社生産者直売のれん会様の事業内容と、矢野様の役割についてお聞かせください。
矢野様:全国の優れた商品を製造するメーカーさんを支援し、価値訴求を軸とした食品流通を築くことが弊社の主な事業内容です。価格競争に陥るのではなく、価値と価格のバランスが取れた魅力的な商品を全国から見つけ出し、お客様にお届けするのが我々の使命になります。
具体的には、2007年の設立以来、北海道から沖縄まで全国各地のメーカーさんの商品を数多く発掘してきました。そのなかでも、私が責任者を務めるブランドライセンス事業部では、見出された素晴らしいブランドの商品をメーカーさんからすべて買い取る役割を担っています。買い取った商品は、それぞれの特性に合った販売経路で展開していく仕組みです。
──総合パン店であった八天堂様が、「くりーむパン」一本に商品を絞った背景には、どのような物語があったのでしょうか?
矢野様:地域のパン屋としての経営が厳しくなる中で、もっとも人気を集めていた商品に特化して全国展開を目指すという経営判断が下されました。当時は社長のお名前を冠した「たかちゃんのパン屋」という総合ベーカリーを最大13店舗展開していましたが、スーパーマーケット内のインストアベーカリーが広がり、競争が激化していた状態だったのです。
そのような厳しい経営環境の中で、ひときわ売上を伸ばしていた商品が「くりーむパン」でした。この実績を機に、「くりーむパン」一本に商品を絞り、全国ブランドへと成長させていきたいという強い思いを社長が抱くようになりました。
──「くりーむパン」は、どのような試行錯誤を経て完成したものなのでしょうか。
矢野様:洋菓子とパンの技術を掛け合わせ、「冷やして食べる」というこれまでにない発想を取り入れて完成した商品です。背景として、お父様が洋菓子店を営まれており、それぞれの優れた技術をパン作りに応用する試作が、数多く繰り返されました。その結果として生み出されたのが、口どけの良さを追求し、パンを冷やして提供するという「冷やして食べるくりーむパン」だったのです。
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株式会社生産者直売のれん会と八天堂の出会い、そして東京進出への軌跡
──株式会社生産者直売のれん会様と八天堂様は、どのような経緯で出会ったのでしょうか。当時の状況もあわせてお聞かせください。
矢野様:八天堂を知ったきっかけは、弊社の会員募集セミナーに八天堂の森光孝雅社長がご参加いただいたことが始まりです。その後、実際にお会いして商品を提供していただいたところ、確かな美味しさに深く感銘を受けました。この味わいこそが、協力関係を結ぶ大きな決め手となっています。
当時の八天堂は、東京を中心とした全国での販売展開を強く希望されていましたが、自社の力だけでは本格的な東京進出を実行するのが難しいという課題がありました。「くりーむパン」はすでに完成していたものの、販売用のパッケージはまったく準備されていなかったのです。そこで、弊社の販売力を活用したいというご意向を受け、2008年末から協力体制を構築することになりました。
──両社が強固な協力関係を結ぶに至った最大の要因は、どのようなものだったのでしょうか。
矢野様:「100年続くブランドに育てる」という共通の目標を持てたことが、もっとも大きな要因です。弊社は商品を一過性の流行で終わらせず、長くお客様に愛されるブランドに育てたいという理念を根底に持っておりました。このブランド育成に対する真摯な姿勢を、当時の八天堂の社長に直接お伝えしています。その結果、ブランドの成長を願う互いの思いが完全に一致し、手を取り合って歩んでいくことになりました。
──東京進出に向けて、最初はどのような場所で販売をスタートされたのでしょうか。
矢野様:東京進出に向けた第一歩は、東京都北区にある十条商店街の催事スペースにおける販売でした。商品をどこで売っていくべきかを探るべく、試験的な販売の場として機能する場所を選定しています。現在のように大規模な駅構内や大型商業施設での展開ではなく、まずは商品を手に取っていただく機会を作り、お客様の反応を直接確かめることから、私たちの販売の歴史が幕を開けたのです。
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エキナカ催事への挑戦。大宮駅での想定外の反響と記録的な販売実績
──十条商店街でのテストマーケティングを経て、JR東日本クロスステーション(当時の名称はJR東日本リテールネット)のエキナカ催事に出店された経緯についてお聞かせください。
矢野様:JR東日本クロスステーションのご担当者とのご縁から、大宮駅の催事スペースで初めてエキナカに出店いたしました。
最初から常設店を構えるのではなく、あえて催事という形態を選択しています。常設店の出店はハードルが高く、事業主様からの理解を得ることも容易ではないという背景があります。
一方で、臨時売店であれば初期投資の負担を抑えつつ、さまざまな場所でテスト販売を実施できます。多くのお客様の反応を直接知る機会を得られますし、リスクを軽減し挑戦の回数も増やせるのです。そうした観点から、まずは催事での展開からスタートする運びとなりました。
──大宮駅での初出店にあたり、当初はどの程度の販売数を見込んでいたのでしょうか?
矢野様:当初は1日あたり30万円ほどの売上、個数にして1500個を販売できれば成功であると見込んでおりました。
しかし、実際の反響は事前の想定を大きく上回る結果となったんです。販売開始直後からお客様が立ち止まって人だかりができ、用意していた1500個は夕方を待たずに完売するほどでした。すぐに八天堂へ電話をかけ、広島から追加の商品を送ってもらう対応に追われたほどです。
その後も発注数を徐々に引き上げ、最終的には1日あたり5,000個を販売するに至りました。商店街とは比較にならないエキナカの圧倒的な流動客数と、駅を利用されるお客様が持つ購買のエネルギーに対し、非常に大きな衝撃を受けたことを記憶しております。
──大宮駅での成功は、その後の品川駅などでの展開にどのような影響を与えたのでしょうか。
矢野様:大宮駅での販売実績は、JR東日本クロスステーションのご担当者様からも高く評価していただいたようで、すぐさま「JR品川臨時売店2号」での出店打診へとつながりました。
エキナカの特性として、平日は同じお客様が高い頻度で駅を利用される背景が存在します。一度食べて美味しかったからと、翌日も買いに来てくださるリピーター層の獲得が成功の大きな要因だと考えています。この流れを受けた「JR品川臨時売店2号」では、催事場にオープンケースを2台増設し、最長となる18カ月連続での出店を果たしました。
大宮駅での確かな手応えが、「JR品川臨時売店2号」での記録的な成果とエキナカ事業の本格的な躍進を牽引したというわけです。
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エキナカの特性を活かした販売戦略と、100年続くブランドに向けた展望
──大宮駅やJR品川臨時売店2号などで爆発的な売上を記録した後も、エキナカでの販売に特化した理由をお聞かせください。
矢野様:日常と非日常の両方の側面を持ち合わせるエキナカの環境こそが、八天堂の「くりーむパン」にもっとも適していると考えたからです。
駅は圧倒的な乗降客数を誇り、新規のお客様と既存のお客様の双方が絶えず行き交う場所です。ほかの販路へ出店するよりも、駅で展開するほうが商品はさらに輝くという明確な確信を持っておりました。毎月実施していた八天堂との経営戦略会議においても、強みが最大限に発揮できるエキナカでの店舗拡大に集中し、「100年続くブランド」を目指す方針で両社の意見は完全に一致していたのです。
また、弊社と八天堂でスタートした事業に、JR東日本クロスステーションさんという強力なパートナーが加わったことも非常に大きな要素となります。JR東日本クロスステーションさんにも八天堂のブランドを育てていただいたからこそ、現在の高い認知度を獲得できました。エキナカでの展開とご支援がなければ、ここまでブランドが成長していなかったというのは紛れもない事実です。
──「100年続くブランド」に向けて、今後はどのような商品展開やブランド戦略を構想しているのでしょうか。
矢野様:これまでに培った認知度に満足することなく、新しい商品や業態を絶えず開発していくことが最大のミッションとなります。現在は「くりーむパンといえば八天堂」と多くの方に広く認知されるまでに成長を遂げました。しかし一方で、今後は顧客の「飽き」とどのように向き合うか、重要な経営課題に直面している状況です。
この課題を乗り越えるべく、より八天堂らしいスイーツパンの可能性を広げる商品開発など、新たな選択肢の拡充が求められます。過去の成功体験にとらわれず、JR東日本クロスステーションさんにも高く評価していただけるような、さらに進化した業態を継続的に提案していきたいと考えています。
──今後、新たにJR東日本クロスステーションの催事場を活用したいと考える企業にとって、どのような点がメリットになるとお考えでしょうか。
矢野様:圧倒的な顧客との接点を持ち、実践的なテスト販売の場として最大限に機能する点がメリットに挙げられます。駅という場所は乗降客数が非常に多く、商品を直接見ていただくことで、実際の購買行動を通じた確かな手応えを得ることが可能です。
くわえて、現場における手厚いサポート体制も大きな魅力のひとつです。各駅の特性やニーズに合わせた出店場所の提案にとどまらず、限られたバックヤードや倉庫の利用に関する柔軟な調整など、多岐にわたる支援の手を差し伸べていただけました。新しい商品企画に対しても真摯に耳を傾けてくださるゆえに、事業者の挑戦を後押しする環境が整えられております。